売上が増えた理由まで、説明できますか?|IPOの基本【上場直前編】
講師:齋藤和也 約5分で読めます

開催の背景
売上が前より増えている。数字は出せるけれど、社長に理由を聞かれると、すぐには答えられない。月々の集計をしていて、そんな場面はないでしょうか。
IPOは、会社の株式を初めて証券取引所に上場すること。少し遠い話に感じても、その準備には、数字の根拠をたどったり、会社の状況を説明したりと、普段の経理につながる仕事が詰まっています。
9月26日(土)11時から、経理を学ぶCuelLinkのオンラインLive授業「IPOの基本 【上場直前編】 全3回シリーズ③」を開催しました。講師はCuelの齋藤和也(公認会計士・税理士)。8月22日の準備編、9月5日の審査編に続く最終回です。前の2回の授業レポートも公開しています。

齋藤 和也講師公認会計士・税理士。株式会社Cuelの共同創業者。ベンチャー企業の上場準備の支援に数多く関わってきました。
この回でやったこと
授業では、上場前の社内の仕事から、投資家に会社を説明する書類、上場後の変化までをたどりました。約1時間を通じて出てきたのは、日々の経理を続けながら、新たな仕事も引き受ける現場の話です。
前半は、社内の規程やマニュアルが実際の仕事で使われているか、というところから。続いて、上場に向けて会社の情報をまとめる申請書類「一の部」の話へ進みました。数字の表を埋める仕事を想像していると、事業や設備の説明まで話が広がります。

後半は、上場承認後の投資家への説明や、上場後に増える公表資料の話へ。最後には、上場準備で自分が経験した仕事を、経理のキャリアとしてどう語るかにも触れました。
扱ったテーマ
- 社内の規程・マニュアルと、実際の業務のずれ
- 通常業務と並行する申請書類づくり、審査・監査への対応
- 「一の部」に載せる過去の数字と、その根拠をたどる難しさ
- 売上や利益の増減を、理由まで文章で説明する仕事
- 上場後の情報発信と、上場準備の経験が経理のキャリアにつながる場面
つまずきやすかったところ
いつもの仕事に、書類づくりと質問への対応が重なる
支払いや請求、毎月の決算は、上場準備が始まっても続きます。そこに申請書類の作成が加わり、証券会社や、決算書などを調べる監査法人から質問が届く。齋藤が挙げたのは、そうした仕事が重なる場面でした。
提出した書類について答えている間も、通常業務の締め切りはやってくる。「上場直前は忙しそう」というイメージが、経理の机の上で何が起きるのか、という話になっていきます。
社内の規程も、用意しただけでは仕事が済みません。齋藤が例に挙げたのは、規程に書いた内容と実際の業務が違っていたり、想定していなかったミスが起きたりするケース。これは特定の会社の画面を見たものではなく、起こりうる場面としての説明です。書類がそろっていても、実際に使うと困ることがある。準備段階での苦労が伝わるところでした。
過去の数字はあるのに、根拠が見つからない
「一の部」には、過去の売上や利益などの推移も載せます。授業で齋藤が立ち止まったのは、その数字をさかのぼる大変さでした。
当時の担当者がすでに退職し、担当も何度か代わっていたら。データや書類が残っておらず、数字の根拠が分からないこともある。講師が挙げた仮の場面ですが、引き継いだ資料を探した経験がある人には、想像しやすい困りごとです。
古い決算書の金額を写せば終わると思っていても、その数字を説明しようとすると、当時の記録が必要になる。授業では、過去の数字を見直す際に、税理士や監査法人とのやり取りが生じる話にも及びました。
上場準備の書類と聞くと、初めて作るものばかりに目が向きがちです。でも、以前の経理が残した記録を頼りにする仕事もある。過去の担当者と今の担当者が、書類を通じてつながる場面でした。
売上が増えた理由を、文章にする
売上が増えたのは、お客さまが増えたからなのか、一人あたりの購入額が増えたからなのか。齋藤は仮の例を挙げながら、数字の増減を説明する難しさに触れました。
ここで登場したのが、経営者の視点で業績などを分析・説明する「MD&A」です。増えた金額は分かっていても、なぜ増えたかを書くには、会社で実際に何が起きていたかを知らなければなりません。経理と、会社の計画を考える経営企画、経営陣とのやり取りが必要になるところです。

書類づくりには印刷会社の支援もあります。授業で紹介されたのは、ひな型や作成システム、助言など。ただ、会社の事情を把握して文章を作る仕事は、社内に残ります。外部の支援があっても、数字の背景までは任せきれないのだと分かる話でした。
終盤には、自分が何を作り、どんな仕事をしたのかというキャリアの話も。業務マニュアルを作った経験や、業務を改善した経験は、上場しない会社でも積めるものです。上場準備で求められる仕事を知るうちに、今の会社で取り組んでいることにも目が向く回になりました。書類づくりの詳しい話は、アーカイブでご覧いただけます。
次回のご案内
次回は10月3日(土)11時から「決算書分析 入門 〜数字が語る会社の姿〜」。続く10月10日(土)11時からは「ベンチャーファイナンス【入門編】全3回シリーズ①」です。いずれも齋藤が講師を務めます。
この回の様子は、アーカイブでご覧いただけます(CuelLinkで購入できます)。全3回シリーズの準備編と審査編のレポートもあります。
CuelLinkでは、経理の実務をテーマにしたLive授業を開催しています。無料登録から参加できる回もあります。
