経理だから、言い出しにくい?|経理のためのコミュニケーション 第1回
講師:株式会社Le beau monde 代表取締役 立石麻由子約4分で読めます

開催の背景
たとえば、月次の数字をきちんとそろえて社長に報告したのに、返ってきたのは「で、みんなの様子はどうだった?」。用件は伝えたはずなのに、話がかみ合わない。数字を報告したい経理と、その間のみんなの気持ちや様子を聞きたい社長では、知りたいことが違うのかもしれません。
AIが進むほど、経理はほかの部署と話す機会が増え、会社のハブ、つまりつなぎ役になる場面も増えていく。そんな見通しから始まった今回の授業では、相手と話す前に、自分がどんなときに不安になり、何を大切にしているかに目を向けます。
10月17日の「『まずは、自分を知るところから』経理のためのコミュニケーション実践シリーズ【第1回】」のテーマは、そんな職場のすれ違いと自己理解。講師は株式会社Le beau monde(ル・ボモンド)代表取締役の立石麻由子さんです。

立石 麻由子講師株式会社Le beau monde 代表取締役。多業種で人間関係やコミュニケーションの講座を開催し、独立12年目。「伝え方の前に、言葉の受け取り方を知る」ことから、自己理解の大切さを伝えている。
この回でやったこと
日々の会話の不安には、こんな理由があるかもしれません。
- 機嫌の悪い相手の前で引っ込んでしまうのは、会話の失敗ではなく、自分を守る反応かもしれない
- 相手の役に立ちたい気持ちが強いほど、不安も大きくなることがある
- 会議で良い意見を聞こうと黙っていても「無知だと思われたかな」と不安になる。場の心理的安全性(不安なく話せる空気)が低いと、前向きな行動にも不安が伴う
ワークは2つ。まず、「経理だから」起きていそうな会話のずれを、紙とペンで書き出します。次に、自分の人生を支えるチームに誰の名前を入れるかを考える「サッカーチーム」。そのあと、講師独自のタイプ診断で、自分の強みと会話のすれ違いを見ていきます。
この「サッカーチーム」のワークは、立石さんが12年前に出会い、今も半年ごとに書き直しているものです。12年前、独立したばかりの頃、自分を支える人として両親や学生時代の友人などの名前を書いて提出したところ、「弱いね」と言われたのです。弱いのが悪いのではなく、誰と協力して生きたいかを考えることが自分を強くする、と教わりました。
扱ったテーマ
- 役割や肩書きが関わる、職場での話しづらさ
- 心理的安全性と、発言するときの不安
- 自分を支えてくれる人との関係
- 自分の強みと、相手が話に求めていることの違い
つまずきやすいポイント
「経理だから」が、言いにくさをつくっていることがある
職場では、お互いの役職や肩書きを意識して話す場面があります。「経理の人」と見られていることが気になって、言いたいことを控えてしまうことも。
自分にとっては仕事上の役割でも、相手にはどう見えているでしょうか。最初のワークでは、「経理だから、相手に細かく突っ込まれている気がする」といった感じ方を書き出しても構いません。役割を意識するあまり言葉を控えたり、伝えたつもりでも伝わっていなかったりすることがあります。
たとえば、経理としてほかの部署とやりとりしていて、相手の作業が止まっているときに、何があったのかを尋ねる。用件だけでなく「ほかで大変なことあるんですか?」と聞ける余裕。それも、場の安心から生まれます。
場の心理的安全性が低いと、前向きな発言にも不安が残る
たとえば、会議でチームのために反対意見を伝えたのに、あとから「邪魔だったかな」と気になる。場の心理的安全性が低いと、前向きに選んだ行動にも不安が伴います。
相手の良い意見を聞こうと黙っていた場合にも、「無知だと思われたかな」と不安になることがあります。
相手の機嫌が悪そうで、責められるのが怖くて引っ込んでしまう。それも自分を守る反応のひとつです。そんな自分に気づけたら、それだけで一歩です。
人の役に立ちたい気持ちが、不安につながることもある
立石さん自身、会議をしているだけで怖くなったり、周囲から大丈夫と言われても自信が持てなかったりした時期がありました。人に興味があり、役に立ちたいと思うほど、不安も募っていたのです。
恩師に「感情豊かだとビジネスに向かない」と言われ、そのまま受け止めていた時期もありました。そこから、人が好きな自分をどう生かすかへと、考え方が変わっていきました。不安を感じやすいのは、人を大事にできる良さの裏返しかもしれません。
相手に合わせすぎると、自分が話しづらくなる
たとえば、経緯から丁寧に説明したい人が、先に結論を知りたい人に話すとき。話し手は誤解なく伝えたいのに、聞き手は結論が分からず、表情が険しくなっていきます。
そこで経緯を毎回省いてしまうと、話し手自身が大切にしていることを言えず、安心して話せなくなることも。相手に合わせるときも、自分が何を大事にして話しているかを知っておく必要があるのです。
タイプ診断は、相手を決めつけるためのものではありません。相手の反応を見ながら、話し方を工夫するための仮説です。自分の傾向も環境によって変わるので、一度の結果だけで決めずに付き合っていけます。
経理の側が結論から話したくても、相手は気持ちや様子を聞きたい、という逆のすれ違いもあります。数字の報告でも、自分が伝えたいことと、社長が聞きたいことの両方を考える必要があるのです。
では、どんな順番で切り出せば、お互いに安心して話せるのか。その具体的な切り出し方は、アーカイブで扱っています。
次回のご案内
このコミュニケーション実践シリーズは、毎月1回の予定です。同じシリーズの次回日程は、決まり次第ご案内します。
次のLive授業は、2026年10月24日(土)11時から「ベンチャーファイナンス【調達編】」。11月7日(土)11時からは「ベンチャーファイナンス【キャリア編】」を予定しています。
CuelLinkは、経理の実務をテーマにしたLive授業を開いている学びの場です。今回の授業も、ワークを含めてアーカイブでご覧いただけます。
