夏の賞与(ボーナス)の計算方法|社会保険料・源泉所得税の計算を完全解説

夏のボーナスシーズンが近づいてきました。従業員にとってはうれしいイベントですが、経理担当者にとっては「賞与の社会保険料と源泉所得税、正しく計算できているかな…」と少し緊張する時期でもありますよね。

賞与の計算は、毎月の給与とは異なるルールが適用されるため、年に数回しかない処理だからこそ手順を見直しておくことが大切です。この記事では、賞与にかかる社会保険料と源泉所得税の計算方法を、具体的な計算例とあわせて解説します。

賞与にかかる社会保険料の計算方法

賞与にかかる社会保険料は、毎月の給与とは計算の基礎が異なります。給与では「標準報酬月額」を使いますが、賞与では「標準賞与額」を使って計算します。

標準賞与額の求め方

標準賞与額は、賞与の支給額から1,000円未満を切り捨てた金額です。

たとえば、賞与の支給額が401,500円なら、標準賞与額は401,000円になります。

標準賞与額の上限に注意

標準賞与額には上限が設定されています。

  • 健康保険:年度(4月〜翌3月)の累計で573万円
  • 厚生年金保険1回あたり150万円

上限を超えた分には保険料がかかりません。高額賞与を支給する場合や、年に複数回賞与がある場合は、累計額の管理が必要です。

社会保険料の計算式

社会保険料 = 標準賞与額 × 保険料率

賞与から控除する社会保険料は以下の4つです。

保険の種類 保険料率(従業員負担分) 備考
健康保険料 約5%前後 協会けんぽの場合、都道府県ごとに異なる
介護保険料 約0.8% 40歳以上65歳未満の従業員のみ
厚生年金保険料 9.15% 2017年9月以降固定
雇用保険料 0.6% 一般の事業の場合(2026年度)

※保険料率は年度・地域によって変わるため、必ず最新の料率表を確認してください。

計算例:賞与400,000円の場合

支給額400,000円の従業員(東京都・協会けんぽ・40歳未満)の場合で計算してみましょう。

ステップ1:標準賞与額を求める
400,000円(1,000円未満の端数なし)→ 標準賞与額 400,000円

ステップ2:社会保険料を計算する

項目 計算式 金額
健康保険料 400,000円 × 4.985% 19,940円
厚生年金保険料 400,000円 × 9.15% 36,600円
雇用保険料 400,000円 × 0.6% 2,400円
社会保険料合計 58,940円

※健康保険料率は東京都・協会けんぽ(2026年度)の例です。実際の料率は所属する健康保険により異なります。

源泉所得税の計算方法

賞与の源泉所得税は、毎月の給与とは異なり、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って計算します。

計算手順

ステップ1:前月の給与から社会保険料を引いた金額を求める
前月の給与総支給額 − 前月の社会保険料等 = 社会保険料等控除後の給与等の金額

ステップ2:税額表で税率を確認
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で、ステップ1の金額と扶養親族等の数から税率を求めます。

ステップ3:税額を計算
(賞与支給額 − 賞与の社会保険料等) × 税率 = 源泉所得税額

計算例の続き

先ほどの例(賞与400,000円)で、前月の給与が300,000円、前月の社会保険料が43,000円、扶養親族0人の場合:

ステップ1:300,000円 − 43,000円 = 257,000円

ステップ2:税額表で「扶養親族0人・257,000円」→ 税率 6.126%

ステップ3:(400,000円 − 58,940円) × 6.126% = 20,889円

前月の給与がない場合の特例

前月に給与の支給がなかった場合(入社月など)は、通常の計算方法ではなく賞与額を6で割った金額を月額とみなして税額表を適用する方法を使います。詳しくは国税庁の「源泉徴収のしかた」を確認してください。

賞与支払届の提出を忘れずに

賞与を支給したら、「被保険者賞与支払届」を年金事務所(または健康保険組合)に提出する必要があります。

提出のポイント

  • 提出期限:賞与支給日から5日以内
  • 届出内容:被保険者ごとの賞与支給額
  • 届出方法:電子申請(e-Gov)、郵送、窓口持参
  • 賞与不支給の場合:「賞与不支給報告書」の提出が必要

提出が遅れると、将来の年金額に影響する可能性があります。賞与支給日のスケジュールに「届出提出」もセットで登録しておくのがおすすめです。

賞与支給時の仕訳例

先ほどの計算例をもとに仕訳を確認しましょう。

賞与支給時

借方 金額 貸方 金額
賞与 400,000 預り金(健康保険料) 19,940
預り金(厚生年金保険料) 36,600
預り金(雇用保険料) 2,400
預り金(源泉所得税) 20,889
普通預金 320,171

会社負担分の社会保険料(法定福利費)の計上も忘れずに行いましょう。

よくある計算ミスと対策

ミス1:標準賞与額の上限を超えているのに気づかない

厚生年金は1回150万円、健康保険は年度累計573万円が上限です。高額賞与の場合は上限チェックを忘れずに。

ミス2:介護保険料の対象者を間違える

40歳の誕生日の前日が属する月から徴収開始です。賞与支給月に40歳になる従業員がいないか確認しましょう。

ミス3:源泉所得税の税率表を間違える

「月額表」と「賞与の算出率の表」を取り違えるケースがあります。賞与の計算には必ず「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使いましょう。

ミス4:賞与支払届の提出を忘れる

5日以内という期限は意外と短いです。賞与計算と届出提出をワンセットの業務フローとして運用しましょう。

よくある質問

Q. 年4回以上の賞与を支給する場合はどうなりますか?

年4回以上支給される賞与は、社会保険上は「報酬」として扱われ、標準報酬月額に含めて計算します。つまり、毎月の社会保険料に上乗せされる形になり、賞与としての届出は不要になります。支給回数の設計は、社会保険料の負担にも影響するため注意が必要です。

Q. 退職予定の従業員に賞与を支給する場合の注意点は?

資格喪失日(退職日の翌日)の属する月に支給された賞与からは、健康保険料・厚生年金保険料を控除しません。ただし、月末退職の場合は翌月が資格喪失月になるため、賞与の支給日と退職日の関係を慎重に確認してください。判断に迷う場合は社労士にご確認ください。

Q. 賞与の支給日を変更した場合、届出は必要?

届出自体に支給予定日の変更届はありませんが、実際の支給日をもとに賞与支払届を提出すれば問題ありません。

賞与計算ができると「人件費の全体像」が見えてくる


賞与の計算は、社会保険料率や税率の適用など、毎月の給与とは違うルールが多く、年に数回の処理だからこそ不安になりがちです。しかし、一つひとつの計算ステップを理解して進めれば、決して難しいものではありません

賞与を正確に計算できるようになると、「従業員1人あたりの人件費は基本給だけではない」「社会保険料の会社負担を含めた総コストはいくらか」という経営視点が自然と身につきます。賞与計算は、経理担当者が会社の人件費構造を理解するための絶好の機会です。

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