新しい人が入ると、届出が一気に来ます。健康保険と厚生年金は5日以内、雇用保険は翌月10日まで。届出先も期限もバラバラです。もともとは労務の仕事ですが、バックオフィスを兼ねていると経理にも回ってきます。
この記事は、入社にともなう手続きを期限の順に並べたチェックリストです。4月の新卒でも、期の途中の中途入社でも、やることの順番は変わりません。
制度の側も動いています。健康保険証は2025年12月1日で従来の形が終わり、2026年10月からはパート・アルバイトの加入判定が1つ減ります。どちらも本文の中で扱います。

入社日から5日以内にやること
期限がいちばん短いのが社会保険の届出です。入社してから書類を集め始めると間に合わないので、入社前にそろえておきます。
健康保険・厚生年金の資格取得届
- 届出先:管轄の年金事務所(協会けんぽの場合)または健康保険組合
- 期限:入社日(資格取得日)から5日以内
- 書類:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 扶養している家族がいる場合:被扶養者(異動)届も同時に出す
- 配偶者を扶養する場合:国民年金第3号被保険者関係届も必要(対象は原則20歳以上60歳未満の被扶養配偶者。協会けんぽは被扶養者届と一体の様式、健康保険組合は別様式で出す)
資格取得届には、原則としてマイナンバーを書きます。書けない事情があるときは基礎年金番号でも受け付けられますが、入社のときに個人番号届出書か、マイナンバーカードの写しを受け取っておくのが確実です。
電子申請(e-Gov)を使えば、年金事務所に行かずに済みます。入社が毎年あるなら、環境を整えておくと楽になります。
保険証まわりは、2024年12月から様式が変わっている
従来の健康保険証は2024年12月2日に新規の発行が終わり、すでに持っているものも2025年12月1日で有効期限が切れました。いまは、マイナンバーカードを保険証として利用登録したマイナ保険証か、資格確認書のどちらかを医療機関に出します。
そのため、協会けんぽの資格取得届と被扶養者(異動)届には「資格確認書発行要否」の欄があります。マイナ保険証を持っていない人が入社したときは、ここに「発行が必要」のチェックを入れます。チェックを入れ忘れても、マイナ保険証を持っていないことが確認されれば資格確認書は後日交付されますが、そのぶん手元に届くのは遅くなります(全国健康保険協会(医療を受けるならマイナ保険証))。健康保険組合に入っている場合は、組合ごとに様式と手順が違うので、加入先に確認してください。
届出が遅れると、マイナ保険証に資格情報が反映されるのも、資格確認書が届くのも遅れます。協会けんぽの場合、それまでに受診が必要になったときは、年金事務所で健康保険被保険者資格証明書の交付を受けられます(有効期間は証明日から20日以内)。
入社の日に受け取る書類
入社の日に受け取る書類は、次のとおりです。入社前にリストを渡しておくと、当日まとめて受け取れます。
- 扶養控除等(異動)申告書
- マイナンバー届出書(個人番号カードの写しなど)
- 給与振込口座の届出書
- 通勤経路の届出(通勤手当の計算に使う)
- 身元保証書(会社の規程による)
- 前の職場の源泉徴収票(中途入社の場合)
- 雇用保険被保険者証(前の職場で加入していた場合)
- 基礎年金番号通知書(2022年3月までに交付された年金手帳でも確認できる)
会社から本人に渡すものもあります。労働条件通知書は、労働基準法で交付が義務づけられています。雇入時の健康診断も、常時使用する労働者が対象です(3か月以内に受けた健診の結果を出してもらえば、その項目は省けます)。
入社の翌月10日までにやること
雇用保険と住民税の手続きは、入社した月の翌月10日が目安になります。社会保険よりは余裕があります。
雇用保険の資格取得届
- 届出先:管轄のハローワーク
- 期限:入社日の属する月の翌月10日まで
- 書類:雇用保険被保険者資格取得届
前の職場で加入していた場合は、雇用保険被保険者証から被保険者番号を確認します。番号が分からないときはハローワークに照会できます。
届出が済むと、雇用保険被保険者証と資格取得等確認通知書が交付されます。本人の分を渡してください。
外国人を雇う場合は、この届出書に在留資格や在留期間を書く欄があります。雇用保険に入らない人を雇うときは、外国人雇用状況届出書(様式第3号)を別に出します。こちらの期限は翌月10日ではなく翌月の末日です。外交・公用の在留資格の方と特別永住者は、届出の対象外です。
住民税を特別徴収に切り替える
住民税の扱いは、入社した人の状況で分かれます。
- 前の職場で特別徴収されていた:前の職場が「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を作り、それを引き継いで市区町村に出す
- 本人が普通徴収で納めている(前の職場で普通徴収に切り替わった、前職がないなど):「特別徴収への切替申請書」を市区町村に出す。まだ納期が来ていない分から特別徴収にできる
- 新卒:前の年に所得がなければ、1年目は住民税なし。翌年6月から特別徴収が始まる
異動届出書が届くのを待っていると切替が遅れます。届かないときは、本人から前の職場に確認してもらうか、市区町村に直接相談します。
初回の給与計算までにやること
給与計算ソフトの設定は、届出と並行して進めます。計算日に慌てないよう、早めに済ませておきます。
給与計算ソフトに入れる項目
給与計算ソフト(freee人事労務、マネーフォワード給与、弥生給与など)には、次を登録します。
- 基本給と各種手当の金額
- 通勤手当の金額(非課税の限度額も確認する)
- 扶養人数(源泉所得税の計算に影響する)
- 社会保険の標準報酬月額
- 雇用保険の加入区分
- 振込口座
- 入社年月日・生年月日
初回だけ気をつける4つ

- 日割り計算:月の途中の入社なら、日割りの方法を就業規則で確認する(暦の日数か、所定労働日か)
- 社会保険料を控除し始める月:厚生年金保険法では、その月に支払う給与から前の月の分を控除するのが基本。給与の締日との関係で社内では「当月控除」と呼んでいることもあるので、過去の給与台帳で「何月分を控除しているか」を確かめる
- 雇用保険料:入社した月の給与から控除が始まる
- 源泉所得税:扶養控除等申告書が出ていないと乙欄で計算される。この申告書は、主たる給与を払う会社に出すもの。入社のときに必ず受け取る
自社のルールが分からなければ、顧問の税理士・社労士に確認してください。
入社手続きチェックリスト
| ✓ | 手続き | 届出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| □ | 労働条件通知書の交付 | 本人 | 労働契約を結ぶとき |
| □ | 入社書類の受け取り | 社内 | 入社当日 |
| □ | 健康保険・厚生年金 資格取得届 | 年金事務所 | 入社から5日以内 |
| □ | 被扶養者(異動)届/第3号被保険者関係届 | 年金事務所 | 入社から5日以内 |
| □ | 雇用保険 資格取得届 | ハローワーク | 翌月10日まで |
| □ | 住民税の特別徴収への切替 | 市区町村 | すみやかに |
| □ | 給与計算ソフトへの登録 | 社内 | 初回の給与計算前 |
| □ | 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の作成 | 社内 | 入社後すみやかに |
| □ | 雇入時の健康診断 | 社内 | 入社のとき |
| □ | マイナンバーの記録と保管 | 社内 | 入社後すみやかに |
| □ | 外国人雇用状況の届出 | ハローワーク | 雇用保険に入る人は翌月10日、入らない人は翌月末日 |
被扶養者(異動)届と第3号被保険者関係届は、扶養する家族や配偶者がいる場合だけ。住民税の切替は中途入社の場合で、新卒は翌年6月からです。マイナンバーは、会社で決めた安全管理の手順に沿って記録し、保管します。
外国人雇用状況の届出は、外国人を雇うときだけ。外交・公用の在留資格の方と特別永住者は対象外です。
入社が何人か重なるときは、この表をスプレッドシートに写して、名前の列を足すと進捗を追えます。
2026年10月、パート・アルバイトの加入判定が1つ減る
短時間で働く人が社会保険(健康保険・厚生年金)に入るのは、いま次の5つを満たしたときです。
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(賃金要件)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2か月を超えて雇用される見込みがあること
- 勤め先の従業員数が51人以上(企業規模要件。厚生年金の被保険者数で数える)
- 学生でないこと

このうち1の賃金要件が、2026年10月1日に撤廃されます。施行の日を定める政令(令和8年政令第275号)が2026年9月11日に公布され、日付が確定しました(厚生労働省(関係政令の整備に関する政令等の公布について)/日本年金機構(短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大))。
理由は、令和7年度の地域別最低賃金がすべての都道府県で時給1,016円を超えたことです。時給1,016円で週20時間働けば月8.8万円を超えるので、賃金の額を確かめる意味がなくなりました(厚生労働省(短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント))。
つまり10月に変わるのは、対象者の数ではなく判定の手順です。週20時間以上で働いている人は、いまでもほぼ全員が賃金要件を満たしています。ただし例外があります。最低賃金法には一定の場合に最低賃金の減額を許可する特例があり、この特例の対象で月額賃金が8.8万円未満の方は、10月以降も原則として加入しません(申し出れば任意で加入できます)。
対象者そのものが増えるのは、4の企業規模要件が下がるときです。
| 時期 | 対象になる企業 |
|---|---|
| 現在 | 従業員51人以上 |
| 2027年10月から | 従業員36人以上 |
| 2029年10月から | 従業員21人以上 |
| 2032年10月から | 従業員11人以上 |
| 2035年10月から | 従業員10人以下も |
規模の条件を満たさない会社でも、加入させる道はあります。過半数の従業員で組織する労働組合があればその組合の同意を、無ければ過半数代表者の同意か、同意の対象になる従業員の2分の1以上の同意を得たうえで、事業主が年金事務所に申し出ます(任意特定適用事業所)。
経理の側でやることは、週20時間以上で働いている人の一覧を作り、企業規模・雇用の見込み・学生かどうかを1人ずつ確かめること。加入する人がいれば、標準報酬月額から会社の負担額を見積もっておきます。
よくある質問
Q. パート・アルバイトも同じ手続きが必要ですか?
パート・アルバイトも、条件を満たせば社会保険と雇用保険に入ります。
社会保険は、週の所定労働時間と1か月の所定労働日数の両方が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上なら、それだけで加入です。4分の3に届かない場合は、上の章の5つの要件で判断します。
雇用保険は、週20時間以上で、31日以上の雇用の見込みがあれば加入します。
判断に迷うときは社労士に確認してください。この分野は改正が続いているので、その時点の基準を見にいくのが確実です。
Q. 届出の期限に遅れたらどうなりますか?
届出そのものは受理されます。ただし3つのことが起きます。
- マイナ保険証への資格情報の反映や、資格確認書の交付が遅れる
- 遅れが続くと、年金事務所やハローワークから指導が入ることがある
- 資格取得日は入社日にさかのぼるので、保険料は入社日から発生する
気づいたらすぐ出してください。大きく遅れている場合の対応は、社労士に相談するのが早いです。
Q. 入社と退職が重なったら、どちらを先に?
入社と退職の手続きには、それぞれ提出期限があります。入社した人の健康保険・厚生年金の届出(5日以内)を先に動かしてください。退職した人の資格喪失届も同じく5日以内なので、並行して処理します。
処理が追いつかないときは、顧問の社労士や税理士事務所に頼むことも考えてください。
まとめ
- 健康保険・厚生年金は5日以内、雇用保険は翌月10日まで。期限の短いほうから動かす
- 従来の健康保険証は終了している。資格取得届の「資格確認書発行要否」欄を見落とさない
- 初回の給与は、日割り・社会保険料をどの月の分から控除するか・乙欄の3つで間違いが起きやすい
- 2026年10月1日、短時間労働者の賃金要件(月8.8万円)が撤廃される。減るのは判定の手順
- 対象者が増えるのは2027年10月から。従業員36人以上の会社が順に入ってくる
→ 授業レポート:その就業規則、本当に大丈夫ですか?|労務リスクの基本
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