この請求額、どうしてこの金額に?|IPOの基本【審査編】
講師:齋藤和也 約4分で読めます

開催の背景
営業から頼まれた金額で請求書を作り、売上を入力する。いつもの仕事でも、「どうしてこの金額になったのですか」と聞かれると、営業に確かめないと分からない。そんな場面はないでしょうか。
IPOは、会社の株式を初めて証券取引所に上場すること。審査と聞くと、上場を目指す会社だけの特別な話に感じるかもしれません。けれど、そこで問われる数字の根拠や社内の仕事の進め方には、普段の経理と重なるところがあります。
9月5日(土)11時から、経理を学ぶCuelLinkのオンラインLive授業「IPOの基本 【審査編】 全3回シリーズ②」を開催しました。講師はCuelの公認会計士・税理士、齋藤和也。8月22日の準備編に続き、今回は審査で経理のどんな仕事が見られるのかを扱う約1時間です。

齋藤 和也講師公認会計士・税理士。株式会社Cuelの共同創業者。ベンチャー企業の上場準備の支援に数多く関わってきました。
この回でやったこと
前半は、自分の会社の経理を振り返る問いかけから。画面に並んだのは、残高の中身や取引の根拠、会計システムの使い方など、日々の仕事に関わる項目でした。答えを考える時間も設け、自社の様子を思い浮かべながら授業が進みました。

続いて、上場を支える証券会社である「主幹事証券」と、証券取引所の審査の話へ。経理に関わる部分では、数字をまとめる仕組み、その裏付け、数字について説明する社内の体制に時間をかけました。
後半には、将来の見込みを会計に反映する難しさや、ミスや不正を防いで正しい数字を出すための社内の仕組み「内部統制」にも触れています。上場の予定がない会社にも身近な例が挙がりました。
扱ったテーマ
- 主幹事証券と証券取引所が行う審査
- 決算の数字をまとめ、社外に公表するまでの社内の体制
- 請求額の根拠と、取引の経緯が分かる記録
- 数字を入力する担当者と、承認する責任者の関わり
- 会計システムのID管理など、日常業務の内部統制
- 将来の見込みを反映する会計処理の入り口
つまずきやすかったところ
請求書があっても、金額の理由が分からない
齋藤が話したのは、営業から「この金額で請求書を出して」と頼まれる場面です。請求書に書いた額と会計ソフトに入力した額は同じ。それでも、その額になった事情までは請求書だけで分からないことがあります。
授業では、契約したときより作業が増え、追加で請求する仮の例が出ました。当初の金額から変わったこと自体には理由がある。けれど、あとから数字を見た経理や監査をする人に、その経緯が伝わるとは限りません。
担当者に聞けば思い出してもらえるかもしれない。でも、取引が終わってから時間がたつと、説明も難しくなりそうです。齋藤の話は、売上の数字から請求書へ、さらにその請求のもとになった取引へとさかのぼりました。何を根拠として残すのか、口頭で依頼されたときにどう対応するのかは、アーカイブで詳しく扱っています。
使えている会計ソフトにも、分からないことがある
会計ソフトのログインIDを複数人で使う、という仮の例もありました。契約しているプランのアカウント数に限りがあり、同じIDを使い回している場面です。

入力するだけなら仕事は進むかもしれません。ところが、あとで誤りが見つかったとき、誰がその操作をしたのかが分かりにくくなる。普段は気にならない使い方が、数字を調べ直す場面で困りごとになります。
内部統制という言葉から、高価なシステムを思い浮かべる人もいるでしょう。齋藤が繰り返し触れたのは、導入したシステムを社内でどう使っているかでした。ログインのような身近な操作も、経理の仕事を振り返るきっかけに。
入力した数字の責任を、一人で抱えてしまう
数字を入力し、決算をまとめるところまで経理が担っている。少人数の会社では、その数字を誰かに見てもらう機会がないまま、仕事が進むこともあります。齋藤は、経理と社長しかいないような会社で、数字の根拠を説明する機会を持ちにくい難しさにも触れました。
自分で入力した数字を、自分だけで確かめている。その状態では「本当にこれで大丈夫だろうか」という不安も残ります。終盤には、承認する人や責任者の話が、経理担当者自身が必要以上に責任を負わないための話として出てきました。
会社の仕組みを整えるには、人手も時間もかかる。小さな会社ですべてを完璧にする難しさにも言葉を添えた齋藤。上場審査を題材にしながら、普段の仕事で感じる不安や負担にもつながる授業でした。
次回のご案内
シリーズ第3回は、9月26日(土)11時から「IPOの基本【上場直前編】」。上場の直前に何が起こり、どんな仕事が必要になるのかを扱います。続く10月3日(土)11時からは「決算書分析 入門 〜数字が語る会社の姿〜」。いずれも齋藤が講師を務めます。
この回の様子は、アーカイブでご覧いただけます(CuelLinkで購入できます)。請求書の根拠をどこまで残すか、口頭で頼まれたときにどうするかは、授業のほうで詳しく話しています。
CuelLinkでは、経理の実務をテーマにしたLive授業を開催しています。無料登録から参加できる回もあります。
