喜怒哀楽を言語化する|感情を整えて前へ進む
講師:立石麻由子(株式会社Le beau monde 代表取締役) 約4分で読めます

開催の背景
「感情の整理」と聞くと、自己啓発のように感じるかもしれません。この回はそうではなく、コミュニケーションの土台を整えるための時間です。
コミュニケーションがうまくいかないとき、私たちはたいてい伝え方のスキルを探しにいきます。ところが、こじれる原因はスキル不足ではないことがある。自分が思っている以上に、感情を乗せて話しているからです。乗せていることに気づけなければ、どんな技術を学んでも同じところでつまずきます。
講師は株式会社Le beau monde 代表取締役の立石麻由子さん。「人が人らしく生きるために」を掲げ、さまざまな業界で研修を行っています。CuelCollegeでは連続で登壇いただいており、この回は生まれ持った特性を扱った前回に続くものです。
この回でやったこと
前半で、喜怒哀楽の4つがそれぞれどんな価値観とつながっているかを確認しました。感情そのものを整理するのではなく、その裏にあるものを見にいきます。
中盤は書き出すワークです。紙とペンを用意して、直近のことでも過去のことでも構わないので、自分の喜怒哀楽を挙げていきます。予定より時間を延ばして取りました。書けるところと書けないところに、その人の傾向が出るからです。
後半は、その自己理解がコミュニケーションにどうつながるのかです。価値観というフィルターの扱い方と、感情が乗った言葉が相手に何を起こすのかを扱いました。
扱ったテーマ
- 喜怒哀楽と価値観の対応
- 感情は抱いてよい、という前提
- 喜怒哀楽を書き出すワーク
- 怒りと悲しみの見分けがつきにくい理由
- 特性によって、感情に鈍感になりやすい人がいること
- 価値観というフィルターとの付き合い方
- 感情を乗せて伝えると何が起きるか
- 「伝わった」と思えるのはどんな状態か
- 持ち帰りとしての喜怒哀楽日記
つまずきやすかったところ
4つの感情は、それぞれ別の価値観を指しています。
| 感情 | つながっている価値観 |
|---|---|
| 喜 | 承認。自分や、自分の関わったものが認められた |
| 怒 | 大切なもの・守りたいもの |
| 哀 | 失いたくないもの(物とはかぎらない) |
| 楽 | 心の栄養・癒し |
書き出してみると、多くの人が「哀が書けない」でつまずきました。 怒りとの区別がつかない、という声が続きます。ある参加者は「自分が攻撃されると怒り、大事なものが攻撃されると哀」と言葉にしていました。
ここには理由があります。怒りと悲しみは直結しているからです。悲しみが積もって、ある瞬間に怒りへ切り替わる。だから外から見ると怒っているのに、本人の中にあるのは悲しみ、ということが起こります。
分けられるようになると、扱い方が変わります。 「私は怒っていたのではなく、悲しかった。失いそうになったから」と分かると、相手にぶつける前に一拍おけます。怒りは相手に向きやすく、悲しみは自分の中に留まりやすい。留めたままにすると体が硬くなり、肩が上がり、息が浅くなる。 その状態で人と話しても、うまくいくはずがありません。
特性による差もあります。 物事をきちんと進めるタイプの人は、喜怒哀楽に鈍感になりやすく、抱いても我慢できてしまう。能力としては高いのですが、あるとき本音を伝えると相手から「なんで今まで言ってくれなかったの」と返ってくる。伝わりにくさが、そこに生まれます。
フィルターは外すものではありません。 誰もが自分の価値観というフィルターを通して人を見ています。それ自体は悪いことではなく、外そうとすると自己否定になる。認めたうえで、かけたり外したりできることが、人を決めつけずに自分も否定しない状態につながります。
そして、いちばんの要点です。 前日に頼んだ仕事が、思っていた形で上がってこない。「なんで」と感情を乗せてぶつけた瞬間に、相手は硬直します。怒られた状態から正常なやり取りへ戻すのは、非常に大変です。 内容としては同じ「これを直してほしい」でも、勢いが乗るかどうかで、相手が消化にかかる時間がまったく変わります。
質疑で出たこと
怒りを抑えようとする癖があるので、自分の感情と向き合えるようになりたい。
仕事上、感情をこう見せないようにしています。
チャットに寄せられた声です。抑えること自体が悪いのではなく、抑えていると気づいていないことが問題になります。
自分がどんなときに喜怒哀楽を抱くのかを分かっているほど、自分の感情に驚く回数が減ります。 家族に何か言われて「なんでそんなこと言うの」と反射的に言葉が出るとき、それは自分の感情に驚いたまま口が動いている状態です。出ること自体は悪くありませんが、あとで自分にも相手にも歪みが残りやすい。
最後にもうひとつ、視点の転換がありました。「相手がどういう状態になったら、伝わったと思えるか」を自分で分かっておくこと。頼んだ瞬間に動いてくれることなのか、最後までやりきってくれることなのか。ここが曖昧なままだと、スキルを試して通用しなかったときに落ち込むだけで終わります。
持ち帰りは喜怒哀楽日記です。1週間、日々の感情に意識を向けて書き留める。継続した方からは「怒りを無視していたことに気づいた」という声が多く出るそうです。怒りっぽくなったという意味ではなく、大切にしたいことがそこにあったと分かるという意味です。
次回のご案内
立石さんのシリーズは、2026年10月から全12回のコースとして再開する予定です。誰に対してどうコミュニケーションを取るか、自分をどう深く理解するかを、いまより踏み込んで扱います。CuelLinkでご案内します。