会計事務の仕事に就く女性の平均年収は、20〜24歳の331.9万円から50〜54歳の522.6万円まで、年齢とともに上がります(厚生労働省(賃金構造基本統計調査 令和6年))。専門知識が積み上がる仕事だからです。リモートワークや時短勤務との相性も良く、ライフイベントとの両立がしやすいのも特徴です。
さらに、一人で幅広い業務を任される職場なら、その経験がそのままキャリアの武器になります。仕訳から決算、税務、給与計算、さらには経営層への報告まで。会社全体のお金の流れを見渡せる場所だからこそ、経営企画やCFOといった次のステージへの道も開けます。
この記事では、経理で働く女性のキャリアプランを4つのステージに分けて、それぞれで必要なスキル・目安の年収・次のステップへの進み方を具体的に解説します。ここに書く年収のレンジはその役職に就いた場合の目安で、あわせて公的統計の実数も並べます。
ステージ1:経理スタッフ(1〜3年目)
主な業務
- 仕訳入力、経費精算
- 請求書の発行・管理
- 売掛金・買掛金の管理
- 月次決算の補助
年収の目安
300万〜400万円(地域・企業規模による)
統計では、会計事務の仕事に就く女性の20〜24歳の平均は331.9万円です(厚生労働省(賃金構造基本統計調査 令和6年))。統計は役職を問わない全体の平均なので、上のレンジとそのまま比べられるものではありません。
身につけるべきスキル
- 日商簿記2級
- 会計ソフト(freee、マネーフォワード等)の操作
- Excel中級(VLOOKUP、ピボットテーブル)
- 正確な仕訳処理と期限管理
このステージで意識してほしいこと
最初は日次のルーティンワークが中心ですが、「なぜこの仕訳をするのか」「この数字は会社の業績にどう影響するのか」を常に考える習慣をつけてください。
担当が分かれていない職場では、入社初期から決算補助や給与計算の一部を任されることがあります。大変に感じるかもしれませんが、この「幅広さ」こそが、後のキャリアで大きな差になります。担当が細かく分かれた職場で売掛金だけを3年続けるよりも、はるかに早く全体像が見えてくるからです。
ステージ2:経理リーダー / 主任(3〜7年目)
主な業務
- 月次決算の主担当
- 年次決算の実務
- 税務申告の準備
- 後輩・パートスタッフの指導
- 税理士・監査法人との窓口
年収の目安
400万〜550万円
統計では、女性の25〜29歳が406.1万円、30〜34歳が429.1万円です。レンジの下寄りにあたります。
身につけるべきスキル
- 日商簿記1級 または 税務の実務知識
- 年次決算を一人で完結させる力
- 管理会計の基礎(予算管理、原価計算)
- チームマネジメントの基本
経営への貢献が見え始めるステージ
月次決算を回すということは、毎月の会社の業績を最初に把握できる立場にいるということです。売上の推移、経費の増減、資金繰りの状態。これらの数字を読み解き、「先月と比べて何が変わったのか」「この傾向が続くとどうなるのか」を考えられるようになると、経理は一気に面白くなります。
税理士事務所や会計事務所でこのステージにいる方は、複数のクライアントを担当することで業種ごとの違いや経営課題のパターンが見えてきます。この経験は、将来どの道に進むにしても大きな財産です。
ライフイベントとの両立
多くの女性がこの時期に出産・育児と重なります。経理職は業務の属人化を防ぐ仕組みを作っておけば、産休・育休からの復帰がスムーズです。
- 業務マニュアルを作成しておく
- 月次決算のチェックリストを共有する
- クラウド会計ソフトを導入してリモートワークに対応
ステージ3:経理マネージャー / 課長(7〜15年目)
主な業務
- 経理部門のマネジメント
- 経営陣への財務レポート
- 中期経営計画への関与
- 内部統制・コンプライアンス対応
- システム導入プロジェクトの推進
年収の目安
550万〜800万円(管理職に就いた場合)
統計では、女性の35〜39歳が455.2万円、45〜49歳が500.2万円です。上のレンジは役職に就いた場合の目安で、統計は役職を問わない全体の平均なので開きがあります。
身につけるべきスキル
- 管理会計(KPI設計、予算実績分析)
- 経営層への報告・プレゼンテーション力
- 法改正への対応力(税制改正、IFRS等)
- DX推進(RPA、クラウドツールの導入判断)
「数字を作る人」から「数字で経営を動かす人」へ
このステージでは、経理の仕事の本質が変わります。月次の数字を正確に作ることは当然として、その数字を使って経営判断をサポートすることが求められるようになります。
「このまま行くと下期の資金繰りが厳しくなる」「この事業のセグメント利益が悪化している」。こうした経営の意思決定に直結する情報を、経理の立場から発信できるのがマネージャーの役割です。
このステージでの分岐点
管理職として一社で昇進を目指すか、転職でキャリアアップするかの判断が必要になります。上場企業の経理マネージャー経験は転職市場で非常に高く評価されます。
ステージ4:CFO / 独立 / 専門職(15年目〜)
選択肢A:CFO(最高財務責任者)
経理・財務の最高責任者として経営に参画。CFOの年収は公的な統計に区分がなく、正確な水準は分かりません。人材紹介各社の解説では上場企業で高い水準も挙がりますが、調査手法が開示されたデータではないため、幅のあるものとして見てください。ここまで積み上げた「会社のお金の流れを隅々まで理解している力」が、経営の最前線で活きるステージです。
選択肢B:独立(フリーランス経理・コンサルタント)
複数の企業の経理を業務委託で請け負う働き方。時間や場所に縛られず、自分の裁量で仕事量を調整できるのが最大のメリットです。一人で幅広い業務を見てきた方は、この働き方との相性が非常に良いです。
選択肢C:専門職(税理士・公認会計士)
実務経験を活かして資格を取得し、士業として活動する道。経理実務の経験がある税理士は、企業側からの信頼が厚く差別化しやすいです。税理士事務所で経験を積んでいる方にとっては、自然な延長線上にある選択肢です。
年齢が上がるほど、男女の差が開く
会計事務の仕事では、20代前半の平均年収に男女の差はほとんどありません。女性331.9万円に対し、男性349.9万円です。
ところが45〜49歳になると、女性500.2万円・男性724.0万円と、224万円の開きになります(厚生労働省(賃金構造基本統計調査 令和6年))。
差が開く理由は、この統計だけでは分かりません。役職に就く割合や勤続年数の分布が違うことが関係していると考えられます。だからこそ、どの段階で何を身につけるかを先に決めておくことが、後の差になります。
経理女性のキャリアでよくある質問
Q. ブランクがあっても復帰できますか?
できます。経理の基本的な業務フローは大きく変わりません。ただし、会計ソフトやクラウドツールのアップデートにはキャッチアップが必要です。特にインボイス制度や電子帳簿保存法など、ここ数年で変わった制度は復帰前に確認しておきましょう。
Q. 一人で幅広く見る職場と、担当が分かれた職場。どちらがキャリアに有利?
それぞれメリットがあります。
- 担当が分かれていない職場:一人で幅広い業務を経験できるため、短期間で実力がつく。会社全体のお金の流れが見える
- 担当が細かく分かれた職場:上場企業なら決算・監査対応・内部統制の経験が積める。専門性が深まる
どちらが「有利」かは目指す方向次第です。CFOや独立を目指すなら全体を見渡した経験が強みになり、専門職を目指すなら一つの領域を深く担当した経験が活きます。
Q. 副業で経理はできますか?
できます。クラウド会計ソフトの普及により、リモートでの経理業務委託の需要は増えています。ただし副業の収入水準がわかる公的な統計はないため、金額の目安はここでは示しません。
経理は「選択肢が増え続ける」キャリア

経理のキャリアは、経験を積むほど選択肢が増えていくのが最大の魅力です。管理職、独立、副業、CFO。どの道を選んでも、積み上げたスキルと経験は裏切りません。
各ステージで「次のステップに必要なスキル」を意識して身につける。それが積み上がります。そして、日々の仕訳や決算の向こうに「この数字が会社の経営にどうつながるのか」という視点を持ち続けることです。
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