経理の仕事とExcelは切っても切れない関係です。会計ソフトが進化してもExcelがなくなることはなく、むしろ「会計ソフトから出したデータをExcelで集計する」場面は増えています。
ただ、Excelの機能は膨大です。どれから手をつければいいのか分からないまま、なんとなく使っている方も多いと思います。
この記事では、経理の実務でよく使う10個を選び、どれから手をつけるかとあわせて紹介します。

まずステップ1と2を優先してください。ステップ3のショートカットとテーブル機能は、日々の作業の中で少しずつ試せば十分です。ピボットテーブルやグラフまで使えると、集計した数字を説明する資料も作りやすくなります。
ステップ1:探す・集める(関数5つ)
会計ソフトから出した明細を、必要な形にそろえる段階です。
1. XLOOKUP / VLOOKUP
経理でよく使う関数の一つです。取引先コードから取引先名を引く、勘定科目コードから科目名を表示する、といったマスタの参照に使います。
Microsoft 365を使っているなら、VLOOKUPではなくXLOOKUPを覚えてください。左側の列を検索できる、見つからないときの表示を指定できる、といった違いがあり、あとから式を直す手間が減ります。
2. SUMIFS
複数の条件で合計を出す関数です。「4月の」「旅費交通費の」合計、「営業部の」「外注費の」合計、といった集計に毎日のように使います。
会計ソフトから出した仕訳データにSUMIFSをかければ、科目別・月別・部門別の数字がすぐに出ます。
3. IF / IFS
条件で表示を分ける関数です。「10万円以上なら要承認と出す」「税率が10%なら○、8%なら△」のように、目で追わなくても分かる表を作れます。
4. ROUND / ROUNDDOWN
経理は端数の処理が多い仕事です。消費税の計算、按分、外貨の換算。どれも「切り捨てるのか、四捨五入するのか」を決める必要があります。手で数字を直しているなら、まずここを関数に変えてください。
5. TEXT / VALUE
日付を「2026年4月」の形にする、文字列として取り込まれた数字を計算できる形に直す。会計ソフトや銀行から出したデータを整えるときに使います。

ステップ2:まとめる(集計3つ)
数字を人に見せる段階です。ここから「説明できる資料」になります。
6. ピボットテーブル
仕訳の明細をピボットテーブルにかけると、科目別・月別・部門別の集計が一度に作れます。手で足し算する必要はありません。


集計の軸はあとから変えられるので、「部門別で見せて」「前年と比べて」と言われても、その場で作り直せます。

7. 条件付き書式
「30万円を超えた金額を目立たせる」「残高がマイナスのセルに色をつける」といった使い方です。締めたあとのチェックで、目で追う負担が減ります。

8. グラフ(棒グラフ・折れ線グラフ)
経営会議では、売上の推移や経費の内訳を図で見せる場面があります。使うのは、まず棒グラフと折れ線グラフの2つで十分。集計表と組み合わせると、数字を1枚の報告資料にまとめられます。

ステップ3:速くする(時短2つ)
毎月くり返す作業の時間を削る段階です。
9. ショートカットキー(厳選10個)
| ショートカット | 機能 | 経理での使いどころ |
|---|---|---|
| Ctrl + C / V | コピー&貼り付け | 基本 |
| Ctrl + Z | 元に戻す | 入力ミスの取り消し |
| Ctrl + D | 上のセルをコピー | 同じ科目の連続入力 |
| Ctrl + ; | 今日の日付を入力 | 伝票日付の入力 |
| Ctrl + Shift + L | フィルターの設定 | 大量データの絞り込み |
| Alt + = | SUM関数の自動入力 | 合計行の追加 |
| Ctrl + 1 | セルの書式設定 | 表示形式の変更 |
| Ctrl + Page Up / Down | シートの切替 | 月別シートの移動 |
| F2 | セルの編集 | 数式の確認・修正 |
| Ctrl + ` | 数式の表示切替 | 計算式の点検 |
10. テーブル機能
データの範囲をテーブルに変換すると(Ctrl + T)、行を足したときに数式や書式が自動で広がります。毎月データが増える集計表では、入れておくと崩れません。
GoogleスプレッドシートのAI関数で分類し、結果を確かめる
Googleスプレッドシートには、セルに直接書いて使うAI関数があります。摘要の分類や文章の要約を、表の中で片づけられます。返ってくるのはテキストで、計算式が出てくるわけではありません。

書き方は =AI("プロンプト", [範囲]) です。範囲は省略できます。関数名は AI でも Gemini でも動きます。たとえば摘要の列を渡して「経費の種類に分類して」と頼めば、その分類がセルに入ります(Googleヘルプ)。
ただし、次の制限があります。
- 使うには、対象のGoogle WorkspaceまたはGoogle AIのプランに入っている必要があります
- AI関数を入れたセルをまとめて選んだとき、生成されるのは最初の350セルまでです
- 元に戻す(undo)は使えません
- ほかの関数の中に入れることはできません
返ってきた結果は、そのまま帳簿の根拠にはできません。分類を任せたときは、次の3つを自分で確かめてください。
- 中身: 摘要と分類が合っているか。判断に迷う行では、AIも間違えることがあります
- 件数: 分類できた行と、元の行数が一致しているか
- 空欄: 答えが返っていないセルが残っていないか
Live授業でも、この線引きを扱いました。判断の材料がそろっているかを確かめるのは、最後まで人の仕事です。
→ 授業レポート:「AIがそう言ったので」は通らない|経理がAIに任せていいこと・ダメなこと
よくある質問
Q. マクロ(VBA)は覚えるべき?
日常の業務では必須ではありません。この記事では、毎月の集計や確認に使う機能を先に挙げています。ただ、まったく同じ手順をくり返す作業が多いなら、自動化する価値はあります。
Q. Googleスプレッドシートでも同じことができる?
関数やピボットテーブルは、スプレッドシートでもほぼ同じように使えます。共同編集では、スプレッドシートのほうが便利な場面もあります。また、Googleスプレッドシートには、上で紹介したAI関数があります。
Q. 関数の式そのものを、AIに書いてもらうのはどうですか?
こちらはChatGPTなどの生成AIに聞く形になります。書き方を思い出せないときは、聞いたほうが早いです。ただ、返ってきた式が何をしているか説明できない状態で使うのは避けてください。式の形が合っていても、参照する範囲が1行ずれていれば数字は狂います。
貼りつけたあとの確かめ方は、式の種類で分かれます。SUMIFSのような集計式なら、合計・件数・端数を元の表と突き合わせる。XLOOKUPのような検索式なら、数件を抜き出して元データと見比べる。これだけで、ずれはたいてい見つかります。
Excelスキルの先にある「経理の付加価値」
Excelは経理の武器ですが、Excelが使えること=経理ができること、ではありません。
価値があるのは、集計した数字の意味を読み取れることです。部門別に経費を集計して「この部門だけ交際費が増えている」と気づける。異常値を見つけたあとに「なぜこうなったのか」を追いかけられる。ここが、AIに任せられない部分でもあります。
CuelLinkは、Excelの操作だけでなく、仕訳の判断や業務の流れも学べるオンラインの学習サービスです。フリープランなら無料で始められます。
