きゅえるんだるん。2026年8月10日に、不正に関する監査のルールの改正案が出たるん💡 「証憑書類は本物として受け入れてよい」という一文が、改正案から削除されたるん。
すみません、その前に。そもそも監査って何ですか。うちの会社には監査は無いんですが……。
いい質問だるん🔍 監査が無い会社にも回ってくる話だから、まず監査の説明からだるん。
そもそも監査とは何か
決算書は、会社が自分で作ります。売上も利益も、会社が自分で集計した数字です。
その数字が正しいかどうかを社外の公認会計士が確かめて、「この決算書は適正です」という意見を出す。これが監査です。確かめる側の公認会計士を監査人と呼び、監査人が集まった事務所を監査法人と呼びます。
何のためにあるんでしょうか。会社が自分で確認すれば済む気もします。
決算書を見て、お金を出すかどうかを決めている人がいるからだるん💡
株主は、決算書を見て株を買うかどうかを決めます。銀行は、決算書を見てお金を貸すかどうかを決めます。どちらも、決算書の数字を信じてお金を出しています。
もしその数字が間違っていたら、信じてお金を出した人が損をします。かといって、株主や銀行が会社に入り込んで、帳簿を1枚ずつ確かめるわけにもいきません。
だから、専門家が代わりに中身を確かめて、「この決算書は信じて大丈夫です」と保証する。監査は、お金を出す人のための仕組みです。
ここがポイント
- 決算書は会社が自分で作る。それを社外の公認会計士が確かめるのが監査
- 株主や銀行は、決算書の数字を信じてお金を出している
- 監査人が代わりに中身を確かめて、決算書を保証する
なぜ大きな会社には、監査の義務があるのか
監査は、好きでやるものではなく、法律で義務付けられています。対象はおもに2種類です。
1つは上場企業。金融商品取引法という法律で監査が義務になっています。株式が市場で売り買いされているので、決算書を信じて株を買う人が全国に大勢いるからです。
もう1つは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社。会社法という法律が「大会社」と呼んで、監査を義務にしています。負債が200億円あるということは、それだけ多くの銀行や取引先が、この会社にお金を貸しているということです。
共通しているのは、決算書を信じてお金を出している人の数と金額です。会社が大きくなるほど、数字が間違っていたときに損をする人が増え、金額も大きくなる。だから、一定の大きさを超えた会社には、外のチェックが法律で義務になります。
逆に言えば、日本の会社の大部分には監査の義務がありません。「うちには監査が無い」は、めずらしいことではなく多数派です。
なるほど。でも、監査が無いうちの会社には、やっぱり関係ないのでは。
それがそうでもないんだるん🔍 監査を受けている取引先に、請求書を出しているかもしれないるん。
ここがポイント
- 監査の義務は、金融商品取引法と会社法で決まっている
- 対象は上場企業と、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社など
- 決算書を信じてお金を出す人が多い会社ほど、外のチェックが義務になる
- 日本の会社の大部分には義務が無く、監査が無い会社のほうが多い
今回変わる「監査基準報告書」とは何か
今回改正されるのは、監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」という文書です。実務では「監基報240」と略して呼ばれます。
監査基準報告書は、監査人の仕事のやり方を定めたルールブックです。日本公認会計士協会がテーマごとに番号を付けて出していて、そのうち240番が「不正」をテーマにした文書です。
名前の似た文書に「監査基準」があります。こちらは金融庁の企業会計審議会が定める大枠のルールで、今回変わるのはそれとは別物です。監査基準報告書は、その大枠を実務でどう実行するかを定めた実務指針にあたります。
縛られるのは監査人で、会社を直接縛る法律ではありません。ただ、監査人のやり方が変わると、監査を受ける会社が出す資料や答える質問が変わります。そして、その会社が受け取る書類、つまり取引先が出した請求書や納品書の扱いも変わります。
日本公認会計士協会は2026年8月10日、この改正案を公表しました。意見の募集は2026年9月10日までで、まだ確定した基準ではありません。
その改正案から、こういう一文が削除されています。
記録や証憑書類の真正性に疑いを抱く理由がある場合を除いて、通常、記録や証憑書類を真正なものとして受け入れることができる。
これまでは、疑う理由が特になければ書類は本物として扱ってよい、と基準に書いてありました。その前提が外れます。
「本物として扱ってよい」って、わざわざ書いてあったんですね。
書いてあったから、外したことに意味があるんだるん💡
なぜ今、この基準が変わるのか
改正案の概要資料は、経緯をこう説明しています。
さまざまな企業の倒産や不祥事が続き、不正への関心が高まった。その結果、財務諸表監査における監査人の役割と責任について、利害関係者から疑問が呈されるようになった。
これを受けて、国際監査・保証基準審議会という国際的な基準づくりの組織が、2025年7月に不正に関する国際監査基準の改訂版を公表しました。日本の基準はそれに合わせる形で見直されています。
つまり、監査人が悪かったという話ではなく、「不正が起きたときに監査人は何をどこまでやるのか」がはっきりしていなかった、という整理です。
ここがポイント
- 改正案の公表は2026年8月10日、意見の募集は9月10日まで
- 背景は、企業の倒産や不祥事が続いたことによる関心の高まり
- 国際基準の改訂に日本が合わせる形の見直し
変わるのは大きく6か所
改正案の概要資料は、主な改正点を6つに整理しています。

1. 「不正の疑い」に、社内外からの申立てが入った
改正案では「不正又は不正の疑い」という新しいセクションが設けられました。
ここで言う不正の疑いには、監査人が手続の中で自分で見つけたものだけでなく、企業の内部や外部の人からの申立ても含まれます。
そして、明らかに軽微と判断したもの以外は、追加の手続をするかどうかを一つひとつ決めることになります。
「誰かが言ってきた」も、監査の対象になるということですか。
そうだるん🔍 匿名の通報でも、明らかに軽微でなければ素通りできなくなるるん。
2. 通報制度そのものが、監査で見られるようになった
会社の内部統制を理解するときに、監査人が見る対象が具体的に書き加えられました。
企業に通報制度がある場合には、その制度の内容を理解すること。そして、通報を通じて行われた不正の申立てに対して、経営者がどう対応したかを理解すること。
制度を作ったかどうかではなく、来たときに何をしたかが見られます。
3. 収益認識の不正リスクは、覆しにくくなった
売上には不正による重要な虚偽表示のリスクがある、という前提がこの監基報240にはもともと置かれています。改正案でもそれは変わりません。
変わったのは、その前提を覆す扱いです。改正案の適用指針は、この前提に反証することは通常適切でない、としています。
売上は疑われる前提で見られる、と考えておくのが安全です。
4. 監査役等に伝える範囲が広がった
監査役は、社内で経営を監督する役員です。社外から確かめに来る監査人とは、別の役割です。会社の形によっては、監査役の代わりに監査等委員会や監査委員会という組織を置いている場合もあります。監査基準報告書では、これらをまとめて「監査役等」と呼びます。
これまでは、財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある不正または不正の疑いを、監査人がこの監査役等に伝えることになっていました。
改正案では、これが「不正又は不正の疑い(明らかに軽微なものを除く。)」に変わります。
伝えるかどうかの線が、重要性から軽微性へ動きました。実務では、伝わる件数が増える方向です。

5. 監査報告書に、不正のことが名指しで載る
上場企業の監査報告書には、監査上の主要な検討事項という欄があります。その年の監査で特に重要だった論点を、監査人が自分の言葉で書く欄だと思ってください。
改正案は、不正に関連する事項について、この欄に不正に関連することが明確に分かる小見出しを付けて記載する、としています。
概要資料は、財務諸表の利用者は不正に関連する事項に関心を示していることから、不正に関連して特に注意を払った事項は通常この欄に載る、とまで書いています。
取引先の監査報告書を見る側になったとき、そこを読めばいいわけですね。
そうなんだるん💡 見出しで分かるようになるから、探しやすくなるるん🔍
6. 証憑を本物として受け入れる、の一文が消えた
改正案は、疑いを抱く状況の例を適用指針に追加したうえで、冒頭の一文を削除しています。
ここで押さえておきたいのは、この一文があった場所です。削除されたのは、監査全体のルールからではなく、不正について定めた監基報240からです。監査のすべての場面で証憑が疑われるようになるのではなく、不正の疑いを調べる場面や、不正に関する監査手続を行う場面で、「証憑は本物と信じてよい」から出発してはいけない、という変化です。
概要資料にも注意書きがあります。これは、監査証拠として使う情報が本物かどうかを確かめる手続を増やすことを意図したものではない、と。
ここがポイント
- 不正の疑いには、社内外からの申立ても含まれるようになった
- 通報制度は、あるかどうかではなく、来たときの対応まで見られる
- 監査役等に伝える線が「重要」から「明らかに軽微でないもの」へ動いた
- 監査報告書に、不正に関連する事項が見出し付きで載る
- 証憑を本物として受け入れてよい、という一文は、不正に関する基準から削除された
監査が無い会社で、何が変わるのか
ここまでは監査人の話です。では、監査を受ける義務がない会社には関係がないのか。
そうでもありません。理由は3つあります。

取引先が、あなたの会社の証憑を見る目を変える
証憑を本物として受け入れてよい、という前提が外れるのは、不正の疑いを調べる場面です。ただ、どの書類がその場面に関わることになるかは、受け取った時点では分かりません。
だから、監査を受けている会社の担当者は、外から受け取る書類の扱いに慎重になります。
そして、その会社にとっての「外から受け取る書類」は、取引先が出した請求書や納品書です。
出どころの分からないPDF、宛先や日付が後から書き換えられる形式のもの、原本がどこにあるか誰も答えられないもの。こうしたものは、これまでより問い返されやすくなります。
通報が来たときに、記録が残っているかどうか
通報制度の話に、監査の有無は関係ありません。
制度がある会社では、来た通報をどう受けて、誰が確認して、どうなったか。この記録が無いと、あとから「対応した」と言えません。
制度が無い会社でも、経理には似た形で情報が入ります。「あの精算、おかしくないですか」と現場から言われる。その一言をどこにも残さないと、同じことが起きます。
明らかに軽微でないものを、抱え込まなくてよくなる
伝える線が下がったことの意味は、監査人だけの話ではありません。
期末に「これくらいなら」と思う場面は、どこの経理にもあります。金額が小さいから、今回だけだから、と自分の中で処理してしまう。
自分の中だけで線を引くと、その判断は誰にも見えません。基準の側が線を下げようとしている以上、抱え込む余地はそれだけ狭くなります。
うちだと、誰に言えばいいんでしょうか。
上司でも社長でも、社外の税理士さんでもいいんだるん🔍 大事なのは、言ったことが残っていることだるん💡
明日からできること
改正案はまだ意見の募集中で、このまま確定するとは限りません。それでも、今日からできることは3つあります。
証憑の出どころを、1種類だけ点検する
いちばん量の多い証憑を1つ選んで、どこから来て、どこに原本があるかを書き出してみてください。
答えられないものが見つかったら、それが最初に問い返されるものです。
「言われたこと」を残す場所を決める
現場から数字の違和感を伝えられたとき、それを書く場所を決めておきます。メールでも共有のメモでもかまいません。場所を決めていないと、口頭のまま流れて記録に残りません。
期末の判断を、1件だけ書いておく
今期の決算で「これは今期でいいのか」と迷った処理を、1件でいいので理由ごと残しておきます。
迷った記録が残っていれば、あとから理由ごと説明できます。
ここがポイント
- 改正案は意見の募集中で、確定した基準ではない
- 証憑の出どころ・通報の記録・判断の記録は、今日から始められる
- どれも、監査を受けているかどうかには関係がない
参考:日本公認会計士協会(監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」の改正(公開草案)の公表について)/日本公認会計士協会(改正(公開草案)の概要)
ルールの改正って遠く感じるけど、たどっていくと自分の机の上の書類に着くんだるん🐹
