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授業レポート

インボイス経過措置2026|10月から控除率が変わる

講師:税理士 猪俣六津宏 約4分で読めます

開催の背景

インボイス制度が始まって3年。請求書の書き方も登録番号の確認も、もう考えずに手が動きます。だからこそ、変わったことに気づきにくい。

2026年10月1日を境に、その手が覚えた処理の一部が変わります。

変わるのは2か所。ひとつは、インボイスを持っていない相手への支払について控除できる割合。もうひとつは、免税事業者から登録した側が使ってきた2割特例です。どちらも「気づかないまま9月と同じ処理を続ける」ことが起こりうる変更で、しかも納税額に直接ひびきます。この回は、切り替わる前にひととおり確認しておくために開きました。

講師は税理士の猪俣六津宏さんです。

この回でやったこと

前半は復習からです。インボイス制度が何を解決しようとした制度だったのか、そして「益税」と呼ばれてきた論点、導入時に懸念された取引の打ち切りや一方的な値下げの問題まで、3年前の議論を並べ直しました。控除率が下がれば、当時と似た摩擦がもう一度起きうるからです。

後半が本題の改正2点です。支払う側の経過措置と、納める側の特例。同じインボイス制度の話でも立場が逆なので、混ざりやすいところを分けて確認しました。

最後に、実務でどこを踏み外しやすいかを、会計ソフトの画面を出しながら見ています。

扱ったテーマ

  • インボイス制度のおさらいと「益税」の論点
  • 導入時に起きた取引上の摩擦と、公正取引委員会の目線
  • 免税事業者からの仕入れに係る経過措置の改正(8割→7割)
  • 8割と7割の境目をどこで判定するか
  • 会計ソフトによる入力の挙動の違い
  • 短期前払費用のように期間をまたぐ取引の扱い
  • 法人の2割特例の終了と、個人の3割特例への移行
  • 2割特例のあとに簡易課税を選ぶかどうか
  • 経過措置が使えなくなる支払額の上限

つまずきやすかったところ

まず、率の下がり方が階段状になりました。 当初の計画では8割の次はいきなり5割でしたが、令和8年度の税制改正で段差がゆるやかになっています。

時期控除できる割合
〜令和8年9月80%
令和8年10月〜令和10年9月70%
令和10年10月〜令和12年9月50%
令和12年10月〜令和13年9月30%
令和13年10月〜0%

規模感も示されました。インボイスを持たない相手へ年間5,000万円(税抜)支払っている場合、8割から7割になることで納税額はおよそ50万円増えます。支払額のおよそ1%が目安、という掴み方です。

次に、境目の判定です。 8割か7割かは取引の日で決まります。事業年度ではありません。役務の提供が9月21日に始まって10月20日に完了したなら、判定日は完了した10月20日です。この一文を取り違えると、10月以降の伝票がまとめて狂います。

そして、会計ソフトの挙動が同じではありません。 発生日から自動で率を当てるソフトもあれば、日付と関係なく8割・7割・5割・3割・控除なしを自由に選べるソフトもあります。前者は、支払時に費用計上する運用をしていると9月分の取引が10月入力になって率がずれる。後者は、9月の取引に7割と打ててしまう。どちらのソフトを使っているかで、注意すべき方向が逆になります。 授業では実際の入力画面を出して、それぞれどこを見ればよいかを確認しました。

もうひとつが、2割特例の終わりです。 ここは支払う側ではなく、納める側の話です。

  • 法人は2割特例が使えなくなります。 令和8年9月30日を含む事業年度が最後です
  • 個人は続きますが、2割特例ではなく3割特例になります(令和9年分・令和10年分)。預かった消費税80万円なら、納付は16万円から24万円へ

法人でとくに注意が要るのは、決算月によって終わる時期がずれる点です。9月決算の会社がいちばん早く使えなくなり、8月決算の会社がいちばん遅い。自社がどこに位置するかで、対応を考える時間の長さが変わります。

そして2割特例が終わったあと、原則課税に戻るのか簡易課税を選ぶのか。ここが一番やっかいだ、というのが講師の見立てでした。簡易課税は納税額が下がることもある一方、必ず納税が出る2年間やめられないという性質があります。大きな設備投資を予定していると、原則課税なら還付になる場面で還付が受けられません。授業では、届出の期限にどんな例外があるか、どういう会社なら簡易課税が向くかまで、条件を並べて確認しました。

最後に、上限が大きく下がりました。 一の免税事業者等への課税仕入れの合計額が1億円(改正前は10億円)を超えると、超えた部分には経過措置が使えません。全国の事業所の管理をそれぞれ個人へ委託しているようなケースでは、届く可能性があります。

質疑で出たこと

簡易課税にしていたのを忘れていて、原則課税なら払わずに済んだ税金を払ってしまったことがあります。(齋藤)

届出は、決算期や申告期限をまたぐと翌年へ繰り越されてしまいます。気づいたときには手遅れ、という事故が起きやすいところです。

一方で、この判断は経理が自分で動かせる数少ない資金繰りの改善策でもあります。有利不利を税理士と詰めて、資金繰りのシミュレーションまで持っていく。そこまでやれる経理は社内での見え方が変わる、という話で締めくくられました。

次回のご案内

消費税はこの先も動きます。令和9年度の税制改正でこの経過措置がさらに変わる可能性もあります。CuelLinkでは、制度が変わるたびに実務で何をすればよいかを扱う授業を開いています。無料登録から参加できる回もあります。

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