20 4月 新入社員が入社したら経理がやるべき社会保険・労務手続き一覧【チェックリスト付き】
4月は新入社員の入社シーズン。経理担当者にとっては「届出の嵐」ともいえる時期がやってきます。
少人数の経理体制では、経理と労務を兼任しているケースがほとんど。社会保険の届出から給与計算の初期設定まで、すべてを一人でこなさなければならない場面も珍しくありません。
手続きの種類が多く、届出先も期限もバラバラ。だからこそ、やるべきことを時系列で整理し、チェックリストとして手元に置いておくことが大切です。
この記事では、新入社員の入社に伴う社会保険・労務手続きを時系列で整理し、チェックリスト付きで解説します。経理兼任の労務担当者が「これさえ見れば漏れなく対応できる」という実務ガイドとしてお役立てください。
入社当日〜5日以内にやること
入社直後に対応すべき手続きは、大きく分けて「社会保険の届出」と「入社書類の回収」の2つです。特に社会保険の届出は期限が短いため、入社前から準備しておくのが理想的です。
健康保険・厚生年金の資格取得届
- 届出先:管轄の年金事務所(協会けんぽの場合)または健康保険組合
- 期限:入社日(資格取得日)から5日以内
- 届出書類:健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 扶養家族がいる場合:被扶養者(異動)届も同時に提出
届出にはマイナンバーの記載が必要です。入社時に「個人番号届出書」または「マイナンバーカードの写し」を回収しておきましょう。
電子申請(e-Gov)を利用すれば、年金事務所に出向く手間が省けます。毎年入社対応があるなら、電子申請の環境を整えておくと効率的です。
注意点:届出が遅れると健康保険証の発行が遅れ、新入社員が医療機関を受診できないケースが起こり得ます。入社前から届出書類を準備し、入社当日に提出できる体制を整えておくことをおすすめします。
入社書類の回収
入社時に回収すべき書類は以下のとおりです。入社前にリストを共有し、当日スムーズに受け取れるようにしましょう。
- 扶養控除等(異動)申告書
- マイナンバー届出書(個人番号カードの写し等)
- 給与振込口座届出書
- 通勤経路届(通勤手当の算定に使用)
- 身元保証書(会社の規程による)
- 前職の源泉徴収票(中途入社の場合)
- 雇用保険被保険者証(前職で加入していた場合)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
これらの書類は給与計算や届出に直結するため、入社当日にまとめて回収する仕組みを作っておくと、後工程がスムーズに進みます。
入社翌月10日までにやること
健保・年金の届出が終わったら、次は雇用保険と住民税の手続きです。こちらは少し期限に余裕がありますが、忘れないうちに対応しておきましょう。
雇用保険の資格取得届
- 届出先:管轄のハローワーク
- 期限:入社日の属する月の翌月10日まで
- 届出書類:雇用保険被保険者資格取得届
前職で雇用保険に加入していた場合は、「雇用保険被保険者証」を回収して被保険者番号を確認します。番号が不明な場合はハローワークに照会できます。
届出が完了すると「雇用保険被保険者証」と「資格取得等確認通知書」が交付されるので、本人分を渡しましょう。
住民税の特別徴収への切替
住民税の手続きは、入社者の状況によって対応が異なります。
- 前職から「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」が届いた場合:必要事項を記入して、対象の市区町村に提出
- 異動届出書が届かない場合:「特別徴収への切替申請書」を市区町村に提出
- 新卒入社の場合:前年に所得がなければ、入社1年目は住民税なし。翌年6月から特別徴収が開始
中途入社で前職から異動届出書が届くのを待っていると、特別徴収への切替が遅れることがあります。届かない場合は本人に前職へ確認してもらうか、直接市区町村に相談しましょう。
給与計算の初期設定
届出と並行して進めたいのが、給与計算ソフトへの登録です。初回給与の計算日に慌てないよう、早めに設定を済ませておきましょう。
給与計算ソフトへの登録項目
以下の情報を給与計算ソフト(freee人事労務、マネーフォワード給与、弥生給与など)に登録します。
- 基本給・各種手当の金額
- 通勤手当の金額(非課税限度額の確認も忘れずに)
- 扶養人数(源泉所得税の計算に影響)
- 社会保険の標準報酬月額
- 雇用保険の加入区分
- 振込口座情報
- 入社年月日・生年月日
初回給与計算の注意点
初回の給与計算では、通常月と異なるポイントがあります。事前に確認しておくことでミスを防げます。
- 日割り計算:月の途中で入社した場合、日割り計算の方法を就業規則で確認(暦日ベース or 所定労働日ベース)
- 社会保険料の控除開始月:「翌月控除」が一般的ですが、会社の規程によっては「当月控除」の場合もあります
- 雇用保険料:入社月の給与から控除開始
- 源泉所得税:扶養控除等申告書の提出がないと「乙欄」で計算されるため、必ず入社時に回収を
社会保険料の控除タイミングは会社によって異なります。自社のルールがわからない場合は、過去の給与台帳を確認するか、顧問の税理士・社労士にご確認ください。
入社手続きチェックリスト
ここまでの手続きを一覧にまとめました。印刷して手元に置いたり、社内の共有フォルダに保存して活用してください。
| ✓ | 手続き | 届出先 | 期限 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| □ | 入社書類の回収 | 社内 | 入社当日 | マイナンバー・振込口座・扶養控除等申告書など |
| □ | 健康保険・厚生年金 資格取得届 | 年金事務所 | 入社から5日以内 | e-Gov電子申請も可 |
| □ | 被扶養者(異動)届 | 年金事務所 | 入社から5日以内 | 扶養家族がいる場合のみ |
| □ | 雇用保険 資格取得届 | ハローワーク | 翌月10日まで | 被保険者番号を事前確認 |
| □ | 住民税の特別徴収切替 | 市区町村 | 速やかに | 中途入社の場合。新卒は翌年6月から |
| □ | 給与計算ソフトへの登録 | 社内 | 初回給与計算前 | 標準報酬月額・扶養人数など |
| □ | マイナンバーの管理台帳への記録 | 社内 | 入社後速やかに | 安全管理措置に基づき保管 |
| □ | 労働者名簿・出勤簿の作成 | 社内 | 入社後速やかに | 法定三帳簿の整備 |
入社が複数名にわたる場合は、一人ひとりの進捗をこのリストで管理すると漏れを防げます。Excelやスプレッドシートに転記して、名前の列を追加するのも実用的です。
よくある質問
Q. パート・アルバイトも同じ手続きが必要ですか?
雇用形態に関わらず、一定の条件を満たせば社会保険・雇用保険の加入義務があります。
社会保険(健康保険・厚生年金):
- 週の所定労働時間が正社員の3/4以上の場合 → 加入義務あり
- 従業員51人以上の企業では、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上などの要件を満たす短時間労働者も対象
雇用保険:
- 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合 → 加入義務あり
加入要件の判断に迷う場合は、社労士にご確認ください。特に社会保険の適用拡大は法改正が進んでいる分野のため、最新の基準を確認することが大切です。
Q. 届出の期限に遅れてしまったらどうなりますか?
届出が遅れた場合でも、届出自体は受理されます。ただし以下のリスクがあります。
- 健康保険証の発行遅延:新入社員が医療機関を受診できない事態が起こる可能性
- 行政からの指導:届出遅延が繰り返されると、年金事務所やハローワークから指導が入ることがあります
- 保険料の遡及:届出が遅れても資格取得日は入社日に遡るため、保険料は入社日から発生します
遅れに気づいた場合は、すぐに届出を行いましょう。届出が大幅に遅延した場合の対応については、社労士に相談されることをおすすめします。
Q. 入社と同時に退職者が出た場合、手続きの優先順位は?
4月は入退社が同時に発生しやすい時期です。どちらも期限がありますが、入社者の健康保険・厚生年金の届出(5日以内)を最優先で対応しましょう。退職者の資格喪失届も同じく5日以内が期限ですので、並行して処理するのが理想です。
対応が重なって処理が追いつかない場合は、顧問の社労士や税理士事務所にサポートを依頼することも検討してみてください。
まとめ:入社手続きは「経営を見る目」を養うチャンス
新入社員の入社手続きは、届出の種類も多く、経理兼任の労務担当者にとっては負担が大きい業務です。しかし、チェックリストを使って一つひとつ確実にこなしていけば、決して難しいものではありません。
そして、入社手続きには経理ならではの大きなメリットがあります。
手続きを通じて、新入社員の給与水準・社会保険料の負担額・人員構成の変化が具体的な数字として見えてきます。つまり、入社手続きは「会社の人件費構造」を理解する絶好の機会なのです。
「届出をこなすだけの作業」と捉えるか、「経営視点を養うチャンス」と捉えるかで、同じ業務でも得られる経験値はまったく違います。ぜひ前向きに取り組んでみてください。
届出の詳細や判断に迷うケースが出てきた場合は、社労士に相談することで安心して対応できます。一人で抱え込まず、専門家をうまく活用していきましょう。
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